『読書について』メモ

ショーペンハウアーの『読書について』を体系的に理解するために、目次を分解して、その中で主要な(感銘を受けた)箇所をメモすることにした。
これらを起点として、この前wikipediaで調べた事柄と関連付けをして、ショーペンハウアーを理解したいと思う。

読書について 他二篇 (岩波文庫)

読書について 他二篇 (岩波文庫)

目次
1.思索
2.著者と文体
3.読書について



1.思索 ―自ら考えること―
・自分で知っていることしか考えることができない。
・読書は思索の代用品に過ぎない
・読書は他人の頭で考えてもらうことである。
・読書とは、旅行案内書をたくさん読んでいる人のことである。
・いつでも思索できるわけではない。
・経験と思索の関係は、食べることと消化し同化することの関係に等しい。

2.著者と文体
著作家には2種類いる。事柄そのもののために書く者と書くために書く者。
・著者には3つのタイプがいる。考えずに書く。書きながら考える。執筆に取り掛かる前に思索を終えている。
・ペンと思索は杖と歩行の関係に近い。老いが身に迫り始めてようやく、人はすすんで杖にすがり、ペンに頼る。
・他人の文体を模倣するのは、仮面をつけるのに等しい。仮面はいかに美しくても、たちまちつまらなくなる。
・著作を評価するのに、何について何を考えたかは知る必要はない。どのように思索したかを知るだけで十分である。
・優れた文体になる規則。主張すべきものを所有すること。
・平凡な著作は、言葉の意味を理解していない。だから、文章がまとまった決まり文句になってしまう。
・表現の簡潔さとは、価値があることだけをいい、誰でも考えつきそうな冗長な説明は加えないこと。
・人間はまだ一度に一つのことしか、明瞭に考えられない動物である。
・比喩は、未知の状態を既知の状態に還元する限り、大きな価値を持っている。
 ・理解しにくい状態を、もっとも完結に表現しようとする試みに過ぎない。
・比喩とは、多種多様の物事の中から、類似している点を取り上げ、類似していない点を捨てることである。
・理解とは結局ある状態を把握することである。
・比喩は、知識を得るための強力な武器である。
・巧妙な比喩を案出するのは、もっとも偉大な業である。比喩を案出することは、事物に共通の類似した特性を把握することである。
・怒りを欠く者は知性を欠く。知性は必ずある種の「鋭さ」を生む。鋭き感覚は、非難と侮蔑を呼び起こす事柄に必ず出会う。この感情こそ、愚かな模倣を制止するものである。

3.読書について
・読書は、他人にものを考えてもらうことである。
・食物は食べることによってではなく、消化によって我々を養うのである。
・紙に書かれた思想は、砂に残った歩行者の足跡以上のものではない。歩行者がその途上で何を見たか知るには、自分の目を用いなければならない。
・100年後には全軍の誰一人として生き残ってはいない。図書目録も10年経てば、この中の一冊も生き残ってはいない。
・読書に際しての心がけとは、読まずにすます技術が非常に重要である。
・悪書を読まなすぎるということもなく、良書を読みすぎるということもない。
・努めて古人を読むべし。真に古人の名に値する古人を読むべし。今人の古人を語る言葉、さらに意味なし。
・多くの場合、書物の購入とその内容の獲得を混同している。
・読み終えたことをいっさい忘れまいと思うのは、食べた物をいっさい、体内にとどめたいと願うようなものである。
・肉体は肉体にあうものを同化する。自分の興味をひくもの、言い換えれば自分の思想体系、あるいは目的にあうものだけを精神のうちにとどめる。
・反復は研究の母なり。重要な書物はいかなるものでも、続けて二度読むべきである。
 ・結論を知っているから、重要な部分を正しく理解することができる。
 ・二度目は最初と違った気分で読むことができ、違った印象を受ける。


著者と文体で、比喩について書かれている。比喩とは、知識を得るための強力な武器である。「老子」と「荘子」について読んでいると、どれも寓話的な表現で物事を理解させようとしていることがわかる。物語にしているから、伝えたいことの本質が相手に伝えやすい。
ショーペンハウアーも古人の本を勧めている。古人の本は、口頭で伝えられていたものが現在の本になっているだけで、昔は口頭でのみ伝えられていた(紙は高価だった)。口頭で伝えるには、覚えやすい表現になっていなければならない。そうでないと忘れ去られてしまう。現在まで残っている古人の本というのは、物語という理解されやすい形で残されてきた書物と言える。比喩的表現を学ぶには適切な教材と言える。


『読書について』から、興味深いキーワードが抽出できた。また、荘子から、寓話という比喩的表現を学べた。次は、荘子の思想を体系的に理解したい。幸い、全33編、6万5千字にまとめられているらしいので、全体像がつかみやすい。そこから、主要な思想と有名な考えをピックカップして、骨組みを抽出したら、肉付けする程度に理解すればよい。